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秋の夜のつきげの駒よわが恋ふる
雲ゐをかけれ時のまも見ん

歌の意味
秋の夜の月毛の駒よ、私が恋しく思う雲居まで駆けてくれ。ほんのひとときでもあの人を見たいのだ。
鑑賞
第一部 明石

 八月十三夜、源氏はついに自ら岡辺の宿へ赴くことを決める。人目を忍んで惟光ばかりを供に立ち、月の明るい夜道を馬で進む。その途上、月毛の馬に呼びかける形で詠まれたのがこの歌である。逢瀬へ向かう道でありながら、心は都の紫の上へ向いているという構図になっている。この後、源氏は明石の君と初めて対面する。

 「つきげの駒」は月毛の馬のことで、白みを帯びた毛色の馬を指し、月の縁で選ばれた語である。「雲ゐ」は雲のある空で、ここでは都を指す。「かけれ」は駆けよという命令形である。「時のま」はほんのわずかな時間のことである。馬に向かって都へ駆けよと呼びかける構成で、これから会いに行く相手ではない人を思う心が、逢瀬の道中に置かれている点にこの一首の複雑さがある。

つきげの駒:月毛の馬。白みを帯びた毛色の馬。
雲ゐ:雲のある空。ここでは都。
かく:駆ける。
時のま:ほんのわずかな時間。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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