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かきつめてあまのたく藻の思ひにも
今はかひなきうらみだにせじ

歌の意味
かき集めて海人が焚く藻の火のように思いは燃えておりますが、今はもう甲斐のないことですから、お恨み申し上げることさえいたしますまい。
鑑賞
第一部 明石

 源氏の「このたびは」の歌を受けて、明石の君が返したのがこの歌である。しみじみと泣きながら、言葉数は少ないものの、応じるべきところは心浅からず申し上げる様子であった。恨みを言わないと述べること自体が最も強い恨みの表明になっており、この人物の抑制の効いた詠みぶりがよく表れている。

 「かきつめて」はかき集めての意である。「たく藻」は焚く藻のことで、「思ひ」の「ひ」に火を掛けて、藻を焼く火と胸の思いとを重ねている。「かひなき」は甲斐がないという意に「貝」を掛け、海辺の景と結びつける。「うらみ」は恨みに「浦」を掛けた語である。一首の中に四重の掛詞を織り込みながら、恨み言を放棄すると述べる構成で、技巧の緻密さがそのまま感情の抑制になっている。

かきつむ:かき集める。
たく藻:焼く海藻。
思ひ:「ひ」に「火」を掛ける。
かひなし:甲斐がない。「貝」を掛ける。
うらみ:恨み。「浦」を掛ける。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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