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なほざりに頼めおくめる一ことを
つきせぬ音にやかけてしのばん

歌の意味
いい加減にお頼みにさせておかれるらしいそのひと言を、尽きることのない琴の音に、また泣く音にかけて、お慕い申し上げることになるのでしょうか。
鑑賞
第一部 明石

 源氏は形見にせめて一節でもと求め、京から携えてきた琴を取り寄せて弾き鳴らす。入道が箏の琴を御簾の内に差し入れると、明石の君も涙を誘われて忍びやかに弾き、その気品ある音色に源氏は驚く。琴はまた掻き合わせる日までの形見にと源氏が言い置いたのを受けて、口ずさむともなく詠まれたのがこの歌である。源氏はこれを恨んで返歌をする。

 「なほざり」はいい加減、本気でないという意である。「頼めおく」は頼みに思わせておくことである。「一こと」は一言に「一琴」を掛けた語で、この場の琴と結びつく。「音」は琴の音に「音に泣く」を掛ける。「かけて」は音に出すことと、心にかけて偲ぶことを掛けている。琴という具体物を軸に、言葉と音と涙が一続きに結ばれており、形見を託される側の心細さが述べられている。

なほざり:いい加減、本気でないさま。
頼めおく:頼みに思わせておく。
一こと:一言。「一琴」を掛ける。
音:琴の音。「音に泣く」を掛ける。
しのぶ:恋しく思い出す。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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