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寄る波にたちかさねたる旅ごろも
しほどけしとや人のいとはむ

歌の意味
寄せる波ではありませんが、裁ち重ねましたこの旅の衣が涙に濡れているからといって、あなたさまがお厭いになることなどございましょうか。
鑑賞
第一部 明石

 入道は出立の日の支度を実に立派に調え、供の者の末々に至るまで旅装を新しくしつらえた。源氏が当日着ることになっている狩衣の装束に、明石の君がこの歌を書きつけておいたのを、源氏は忙しい最中に見つける。源氏はこれに返歌をし、自らの召し物と取り替えて与えることになる。

 「寄る波に」は「たつ」を導く序詞である。「たち」は波が立つことに衣を裁つことを掛けている。「旅ごろも」は旅の衣のことで、明石09で源氏が用いた語をここで受け直す形になっている。「しほどけし」は塩に濡れているという意で、涙に濡れることをたとえる。「いとふ」は嫌う、厭うことである。衣を仕立てるという具体的な行為に涙を織り込む構成で、贈り物そのものが歌の器になっている。

寄る波:寄せる波。「たつ」を導く序詞。
たつ:波が立つ。「裁つ」を掛ける。
旅ごろも:旅の衣。
しほどけし:塩に濡れている。涙に濡れる意。
いとふ:嫌う。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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