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わたつ海にしづみうらぶれ蛭の子の
脚立たざりし年はへにけり

歌の意味
大海に沈んで落ちぶれ、蛭の子が脚も立たなかったように、身動きもとれぬまま年を経てしまいました。
鑑賞
第一部 明石

 帰京し権大納言に昇進した源氏は、召しを受けて参内する。朱雀帝は御装束を格別に整えて出御し、御物語はしめやかに続いて夜に入った。十五夜の月が静かに照る中、帝が管弦の遊びも昔聞いた楽の音も久しく絶えたと仰せになったのを受けて、源氏が申し上げたのがこの歌である。帝はこれをしみじみと、また心恥ずかしく受け止めて返歌をする。

 「わたつ海」は大海のことである。「うらぶる」は落ちぶれる、しょげるという意である。「蛭の子」は記紀神話で、イザナギ
イザナミの間に生まれながら不完全であったため葦船に乗せて流されたという子を指す。骨肉の間でありながら流された身を、その神話に重ねている。帝に対する訴えとしてはかなり踏み込んだ表現であり、二年余りの配所の日々が「脚立たざりし」の一語に集約されている。

わたつ海:大海。
しづむ:沈む。落ちぶれる意を含む。
うらぶる:落ちぶれる、しょげる。
蛭の子:神話で流されたという子。
年をふ:年月を経る。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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