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須磨の浦に心をよせし舟人の
やがて朽たせる袖を見せばや

歌の意味
須磨の浦で心をお寄せ申し上げた舟人の、そのまま涙に朽ちてしまった袖を、お見せしたいものでございます。
鑑賞
第一部 明石

 帥のむすめの五節の君は、源氏への人知れぬ思いも今は冷めた心地がして、使いの者に女房へ目配せをさせ、二条院にそっと手紙を置かせる。紫の上に見つからぬための配慮であった。この歌はその文に記されたものである。源氏は筆跡が以前よりよくなったと見て取り、差出人を見抜いて返事を遣わす。

 「須磨の浦」は須磨巻で綱手縄の歌を贈った折のことを指し、二巻をまたいで場面が呼び戻されている。「心をよせし舟人」は心を寄せた舟の人のことで、自らを指す。「朽たせる袖」は涙に朽ちてしまった袖のことである。かつて舟の上から琴の音に引き留められた者が、今も都で同じ思いを抱いていると述べる構成で、須磨巻の一場面がここで回収されている。

須磨の浦:須磨の海辺。
心をよす:心を寄せる、思いを寄せる。
舟人:舟に乗っている人。
朽つ:朽ちる、腐る。
見す:見せる。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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