ひとりしてなづるは袖のほどなきに
覆るばかりのかげをしぞまつ
- 歌の意味
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一人で撫でて育てますには私の袖は狭うございますから、すべてを覆うほどの御庇護の陰をお待ち申しております。
- 鑑賞
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第一部 澪標
源氏の「いつしかも」の歌を受けて、明石の君が返したのがこの歌である。乳母の一行が到着し、入道は都の方角を拝んで喜び、明石の君も物思いに沈んでいた気持ちがいくらか慰められて、床から頭を上げるほどに回復する。使いが急ぐというので、思うことを少し書き連ねたうえでこの一首を差し上げた。源氏はこの後、姫君のことが不思議なほど心にかかるようになる。
「なづる」は相手の歌の「なづる」をそのまま受け取っており、贈答歌の作法が守られている。「袖のほどなき」は袖が狭いという意で、自らの力の乏しさを謙遜して述べる。「覆るばかりのかげ」はすべてを覆うほどの陰のことで、源氏の庇護をたとえている。相手が天女の岩を撫でる壮大な時間を述べたのに対し、こちらは自分の袖の狭さという卑小な尺度で応じており、身分の隔たりへの意識がここでも働いている。
なづ:撫でて育てる。
ほどなし:狭い、余裕がない。
覆る:覆いつくす。
かげ:庇護、恩恵。
まつ:待つ。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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