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誰により世をうみやまに行きめぐり
絶えぬ涙にうきしづむ身ぞ

歌の意味
誰のためにこのつらい世を海に山にさまよい歩き、絶えることのない涙に浮き沈みしてきた我が身なのか。
鑑賞
第一部 澪標

 紫の上の「思ふどち」の歌を受けて、源氏が返したのがこの歌である。すべてはあなたのためであったと述べ、些細なことで人に非難されまいと思うのもただ一人のためだと言い添える。そして箏の琴を引き寄せて勧めるが、明石の君が琴に優れていたことを聞いた後だけに、紫の上は手も触れようとしない。源氏はその意地の張り方をかえって魅力的なものと見る。

 「誰により」は誰のためにという問いかけである。「世をうみ」は世を憂しと思う意に「海」を掛けており、「うみやま」で海と山の語を導く。「行きめぐり」はさまよい歩くことで、須磨
明石の流離を指す。「うきしづむ」は浮き沈みすることで、「海」の縁語として働いている。明石巻で入道が用いた「世をうみに」と同じ掛詞をここでも用いており、海の語彙が都の室内の会話にまで持ち込まれている。

世をうみ:世を憂しと思う。「海」を掛ける。
うみやま:海と山。
行きめぐる:さまよい歩く。
うきしづむ:浮き沈みする。海の縁語。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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