思ふどちなびく方にはあらずとも
われぞけぶりにさきだちなまし
- 歌の意味
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思い合うお二人がなびいてゆく方角には添えなくとも、私は煙となって先立ってしまいましょう。
- 鑑賞
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第一部 澪標
源氏は、他所から耳に入って誤解されてはならぬと考え、紫の上に明石で姫君が生まれたことを打ち明ける。話は次第に明石の君その人へと及び、別れの夕べの煙のこと、返された歌のこと、ほのかに見た容貌、優美な琴の音まで語られた。それを聞いた紫の上が、顔を背けてつぶやくように詠んだのがこの歌である。源氏はこれに返歌をする。
「思ふどち」は思い合う者どうしのことで、源氏と明石の君を指す。「なびく方」はなびいてゆく方角のことで、明石巻で源氏が「藻塩やくけぶりは同じかたになびかむ」と詠んだ歌を直接に踏まえている。「けぶりにさきだつ」は煙となって先に死ぬことで、火葬の煙を含意する。相手が明石の君に贈った歌の語をそのまま拾い上げ、同じ煙の語を自らの死に転じており、聞かされた側の痛みが技巧の形で示されている。
思ふどち:思い合う者どうし。
なびく:横に流れる。心が寄る意を含む。
けぶり:煙。火葬の煙を含意する。
さきだつ:先に死ぬ。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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