古典和歌stream

海松や時ぞともなきかげにゐて
何のあやめもいかにわくらむ

歌の意味
海松のように、いつと定まった時もない岩陰にいて、何の物の道理を、どのように見分けているのだろうか。
鑑賞
第一部 澪標

 五月五日が姫君の五十日にあたると人知れず数えた源氏は、都にいればどれほど華やかに祝ってやれたかと惜しみ、必ずその日に着けと命じて使いを明石へ発たせる。使者は五日に到着し、実用の品々とともにこの歌が届けられた。文には、このままでは過ごせぬのだから上京を決断してほしいとも記されている。明石の君はこれに返歌をする。

 「海松」は海藻の一種で、岩陰に生えることから姫君をたとえる。「時ぞともなき」は季節の定まらないことで、田舎に埋もれた暮らしを述べる。「あやめ」は物の道理を見分けることに、端午の節句の菖蒲を掛けている。「いかに」はどのようにという意に「五十日」を掛ける。節句の景物と祝いの日数とを二重の掛詞で結び、都の年中行事から遠く離れた場所にいる我が子を案じる構成になっている。

海松:岩に生える海藻。
時ぞともなき:季節の定まらない。
かげ:岩陰。
あやめ:物の道理。「菖蒲」を掛ける。
いかに:どのように。「五十日」を掛ける。
作者
紫式部
出典
源氏物語
その他の歌