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おしなべてたたく水鶏におどろかば
うはの空なる月もこそいれ

歌の意味
手当たり次第に戸を叩く水鶏に驚いていたら、上の空の月まで招き入れてしまうことになるよ。
鑑賞
第一部 澪標

 花散里の「水鶏だに」の歌を受けて、源氏が返したのがこの歌である。訪れの絶えたことを咎める言葉に対し、誰にでも戸を開けては困ると戯れに切り返している。もっとも源氏は、この人が浮ついた振る舞いをする性分でないことをよく知っており、口先だけの言葉であった。花散里は続けて、須磨出立の折に「空な眺めそ」と約束されたのに、帰京された今も嘆かしさは変わらないと述べる。

 「おしなべて」は手当たり次第に、一様にという意である。「水鶏」は相手の歌の語をそのまま受け取っている。「うはの空なる月」は上の空に浮かぶ月の意に、心の定まらぬ浮気な男を掛けている。相手が水鶏を訪れの契機として述べたのに対し、その水鶏を無差別に戸を叩くものとして捉え直しており、同じ鳥の像を反転させる形の応酬になっている。

おしなべて:手当たり次第に、一様に。
たたく:戸を叩く。
おどろく:はっと気づく。
うはの空:上の空。心の定まらないさま。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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