古典和歌stream

たゆまじき筋を頼みし玉かづら
思ひのほかにかけはなれぬる

歌の意味
絶えることはあるまいと頼みにしていた玉かづらの筋であったのに、思いもかけず離れていってしまうのだ。
鑑賞
第一部 蓬生

 源氏が須磨明石にいた数年の間に常陸宮邸は荒れ果て、末摘花は蓬の茂る屋敷を守って暮らしていた。そこへ大宰大弐の北の方となった叔母が、任地へ下るにあたって末摘花を娘たちの召使いにしようと迎えに来る。末摘花が動こうとしないので、叔母はせめて侍従だけでもと連れ去ろうとした。長年仕えてきた侍従との別れに際し、末摘花が形見として自らの落ち髪で作った鬘と薫衣香を与え、添えて詠んだのがこの歌である。侍従はこれに返歌をする。

 「たゆまじき筋」は絶えることのない縁のことで、「筋」は髪の筋と血縁の筋の両義を含む。「玉かづら」は蔓草の歌語で、贈った鬘を指すとともに侍従その人をたとえている。「たゆ」「筋」「かけ」はいずれも玉かづらの縁語として働く。「かけはなる」は遠く離れることで、蔓が掛かる意と心が離れる意が重なる。贈り物の実体である髪をそのまま歌の中心に据えており、与えるべき衣も垢じみて渡せぬほどの窮乏が背景にある。

たゆ:絶える。
筋:糸筋、血縁の筋。
玉かづら:蔓草。ここでは鬘と侍従を指す。
かけはなる:遠く離れる。
作者
紫式部
出典
源氏物語
その他の歌