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たづねてもわれこそとはめ道もなく
深きよもぎのもとのこころを

歌の意味
たとえ探し求めてでも、この私こそが訪ねよう。踏み分ける道もないほど深く茂った蓬の下にある、昔のままのあの人の心を。
鑑賞
第一部 蓬生

 惟光の報告を聞いた源氏は、この草深い中でどのような気持ちで過ごしてきたのかと思い、これまで訪れなかった自らの薄情さを自覚する。しかしすぐに入るのはやはり気が引け、風情ある消息を送ろうにも、以前見た通りの返歌の遅さであれば使いが待ちあぐねると考えて思いとどまる。惟光が踏み分けられぬほどの蓬の露だと申し上げたのを受け、独り言のように詠まれたのがこの歌である。この後、惟光が馬の鞭で露を払いながら源氏を邸内へ導き入れる。

 「たづねてもわれこそとはめ」は探し求めてでも自分こそが訪ねようという意で、自らを奮い立たせる調子を持つ。「道もなく深きよもぎ」は踏み分ける道もないほど深く茂った蓬のことで、この巻の巻名の由来である。「もと」は蓬の根元の意に、もとの心すなわち昔のままの心を掛けている。荒廃した庭という外界の景が、そのまま変わらぬ人の心を包むものとして述べられており、この巻全体の主題が一首に集約されている。

たづぬ:探し求める。
とふ:訪ねる。
道もなし:踏み分ける道もない。
よもぎ:蓬。荒廃の景物。
もと:根元。「もとの心」を掛ける。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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