年をへてまつしるしなきわが宿を
花のたよりにすぎぬばかりか
- 歌の意味
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長い年月お待ち申し上げてもその甲斐のなかったこの宿を、花をご覧になるついでに通り過ぎてくださっただけなのでしょうか。
- 鑑賞
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第一部 蓬生
源氏の「藤波の」の歌を受けて、末摘花が返したのがこの歌である。忍びやかに身じろぐ気配も袖の香も、昔よりは大人びたかと源氏には思われた。月が沈むころ、遮る建物も軒先もない邸内に月光が明るく差し入り、昔と変わらぬ調度のさまが見て取れる。源氏はこの人が同じさまで年月を過ごしてきたことをしみじみと不憫に思う。この後、源氏は蓬を払わせ板垣を修繕させるなど庇護を始め、二年の後に二条東院へ移すことになる。
「年をへて」は長い年月を経てという意である。「まつ」は相手の歌の掛詞をそのまま受け取り、松と待つを掛けている。「しるしなき」は甲斐がないという意で、これも相手の「しるし」を受け直している。「花のたより」は花を見るついでのことで、藤の花に惹かれて立ち寄ったにすぎないのではという問いになっている。相手の用いた語をことごとく引き取りながら、その意味だけを反転させる構成で、この人物としては珍しく明確な恨み言になっている。
年をふ:年月を経る。
まつ:松。「待つ」を掛ける。
しるしなし:甲斐がない。
たより:ついで、機会。
すぐ:通り過ぎる。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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