伊勢の海のふかきこころをたどらずて
ふりにし跡と波や消つべき
- 歌の意味
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伊勢物語の海のように深い情趣をたどりもせずに、古びた昔語りだからといって、波が砂の足跡を消すように、なきものにしてよいものでしょうか。
- 鑑賞
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第一部 絵合
中宮藤壺の御前で、梅壺方と弘徽殿方に分かれて物語絵の優劣を競う絵合が催される。竹取物語と宇津保物語の勝負に続き、伊勢物語に正三位を合わせて、なお勝負がつかない。右方の正三位は宮中あたりから始めて近世の様子を派手に描き、見どころで勝っていた。左方の劣勢の中、梅壺方の女房である平内侍がこの歌を詠み、業平の名を貶めてよいものかと訴える。
「伊勢の海」は伊勢物語をその海にたとえた語で、「ふかき」「波」はいずれもその縁語として働く。「ふかきこころ」は深い情趣のことである。「たどらずて」はたどりもせずにの意である。「ふりにし跡」は古びた昔の物語に、波の消す砂の足跡を重ねる。「波や消つべき」は波が消してよいものかという反語である。物語の題名である伊勢を海の景に転じ、その縁語で一首を組み立てる構成で、絵合という場にふさわしい機知が働いている。
伊勢の海:伊勢物語を海にたとえた語。
ふかし:深い。海の縁語。
たどる:たずね求める。
ふりにし跡:古びた昔の物語。砂の足跡を掛ける。
消つ:消す。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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