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なべて世のあはればかりをとふからに
誓ひしことと神やいさめむ

歌の意味
世間並みのひととおりの弔問をするだけのことでも、清浄を誓った身だからと、私の仕える神がお咎めになるだろう。
鑑賞
第一部 朝顔

 源氏の「人知れず」の歌を受けて、朝顔の姫君が返したのがこの歌である。喪に服する自分をただ弔問してくださるだけのことでさえ、斎院として神に清浄を誓った身の上には憚りがある、と述べて、源氏の恋の訴えをやんわりとかわしている。相手を無愛想に突き放すのではなく、あくまで神への誓いを口実にして距離を保とうとする、慎み深い姫君の姿勢が表れている。源氏はこの後も執拗に思いを寄せ続けるが、姫君の心は動かない。

 「なべて世の」は世間並みの、ひととおりの、という意である。「あはればかり」は、喪中の相手をいたわる弔問の情だけ、ということである。「とふ」は訪れる、見舞う、また弔問するの意で、ここでは喪中見舞いをいう。「誓ひしこと」は、斎院として神に清浄を誓ったことを指す。「神やいさめむ」は、その誓いを破るなと神が咎めるだろう、という意である。ただの弔問さえも神の戒めに触れるかもしれない、と述べることで、それ以上の恋の申し出はなおさら受け入れられないと、遠回しに拒む一首になっている。

なべて世の:世間並みの。ひととおりの。
あはれ:しみじみとした情。ここでは喪中を弔ういたわりの心。
とふ:訪れる。見舞う。弔問する。
いさむ:戒める。禁じる。咎める。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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