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秋はてて霧のまがきにむすぼほれ
あるかなきかにうつる朝顔

歌の意味
秋が終わって、霧のかかる籬に取り残され、あるかなきかの様子で色あせてゆく朝顔――それが今の私です。
鑑賞
第一部 朝顔

 源氏の「見しをりの」の歌を受けて、朝顔の姫君が返したのがこの歌である。含みの深い源氏の文に対し、返事をしなければ気をもませるだろうと、女房たちに硯を勧められて詠んだものである。あなたが朝顔の花にたとえてくださったが、その花のように、私はもう秋が終わって霧の垣に取り残され、あるかなきかに色あせてゆく身です、と応じている。源氏の趣向を受けつつ、自らの衰えを認めて恋を退ける、慎ましくも哀感のこもった一首である。この歌は青鈍の喪中の紙に、やわらかな墨つきで書かれていた。

 「秋はてて」は秋がすっかり終わって、という意である。「霧のまがき」は霧のかかった籬(まがき)で、荒れて寂しい風情を添える。「むすぼほれ」は、露や霧に濡れてしおれ、ふさぎこむ様子である。「あるかなきか」は、あるのかないのか分からないほどのはかない有様をいう。「うつる」は花の色があせる、盛りが過ぎる、という意である。源氏が「朝顔の花のさかり」と詠んだのを受け、その盛りが過ぎて色あせた朝顔に、斎院を退いて衰えたわが身を重ねている。相手の花の比喩をそのまま受けとって返す、贈答の妙をこめた一首である。

秋はつ:秋がすっかり終わる。
まがき:竹や柴で編んだ低い垣。
むすぼほる:露や霧に濡れてしおれる。ふさぎこむ。
あるかなきか:あるのかないのか分からないほどはかないさま。
うつる:花の色があせる。盛りが過ぎる。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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