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ふぢごろも着しはきのふと思ふまに
けふはみそぎの瀬にかはる世を

歌の意味
藤衣を着たのは昨日のことと思っているうちに、今日はもう除服の禊をする時期に変わってしまった。淵が瀬になるという、移り変わりの激しい世であることよ。
鑑賞
第一部 乙女

 源氏の見舞いの歌への返しである。折にかなった風情ある文であったので、姫君は「はかなく」とだけ言葉を添えて返した。源氏は例によってその筆跡に目をとどめて見入っている。源氏はまた叔母の女五の宮にも折を逃さず見舞いを送るので、女五の宮はいたく感激し、子供とばかり思っていた源氏がこれほど大人びたと褒めそやす。そして姫君に対面するたび、故式部卿宮も源氏との縁組を望んで悔しがっていたなどと古風に持ち出して結婚を勧めるが、姫君は、亡き父にも強情な娘と思われたまま過ごしたのに、今さら世間に妥協するのは似つかわしくないと、恥じ入るほどきっぱりと断るのだった。

 「ふぢごろも」は藤衣で、喪服のことである。「瀬」は川の浅瀬の意と時期の意とを掛け、「ふぢ」に「淵」を響かせて、淵と瀬の対をなしている。『古今集』の「世の中はなにか常なる飛鳥川昨日の淵ぞ今日は瀬になる」などを踏まえ、移ろいの激しさを言う。源氏が「ふぢ」「みそぎ」と詠みかけたのを、そのまま受けて詠み返す技巧が凝らされている。ただし応じたのは詞のうえだけで、恋の呼びかけには少しも踏み込まず、時の移ろいへの感慨に終始する。この距離の取り方そのものが、朝顔の姫君の返事なのである。

ふぢごろも:藤衣。喪服。
きのふ:昨日。つい先ごろ。
みそぎ:除服の禊。喪服を脱ぐ際の祓。
瀬:川の浅瀬の意と、時期
折の意を掛ける。「淵」と対をなす。
かはる世:移り変わってゆく世の中。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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