あめにますとよをかひめの宮人も
わが心ざすしめを忘るな
- 歌の意味
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天にいらっしゃる豊岡姫にお仕えする宮人であるあなたも、私が心をかけて張り渡した注連縄のことを、どうか忘れないでほしい。
- 鑑賞
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第一部 乙女
この年の五節の舞姫として、源氏は惟光の娘を宮中に奉ることにした。雲居雁と引き離されて塞ぎこみ、書物も読まずに臥していた夕霧は、気がまぎれるかと思って二条院をそっと歩きまわる。舞姫は大切に車から降ろされ、妻戸の間に屏風を立てただけの仮の設えで休んでいた。そこへ忍び寄ってのぞいてみると、疲れたようすで物に寄りかかっている。年格好がちょうど雲居雁ほどで、丈はいくらか高く、美しさではまさって見えるほどである。心が移るというのではないが平静ではいられず、自分の衣の裾を鳴らして相手の注意を引き、この歌を詠みかけた。舞姫は誰とも分からず薄気味悪く思ううち、化粧直しの世話役たちが近寄って騒がしくなり、夕霧は心残りのまま立ち去った。
「あめにます」は天にいらっしゃるの意。「とよをかひめ」は豊岡姫で、天照大神をさす。『拾遺集』神楽歌の「みてぐらは我がにはあらずあめにますとよをかひめの宮のみてぐら」を踏まえている。「宮人」はその神に仕える者で、ここでは五節の舞姫である相手をいう。「しめ」は神域を示す注連縄と、自分のものとする「占め」とを掛け、豊岡姫の縁語ともなっている。神事の語を借りながら、あなたを我がものと決めた、それを忘れるなと告げるのだから、内容はきわめて大胆である。歌に添えて「みづがきの」と口にしたのは「をとめ子が袖ふる山のみづがきの久しき世より思ひそめてき」を引いたもので、ずっと前から思っていたと言い添える趣向。あまりに唐突なこの求愛ぶりは、『伊勢物語』の男の一途なふるまいを思わせる若さである。
あめにます:天にいらっしゃる。
とよをかひめ:豊岡姫。天照大神の異称。
宮人:神に仕える人。ここでは五節の舞姫。
しめ:神域を示す注連縄と、自分のものとする「占め」とを掛ける。
みづがきの:瑞垣の。「久し」を導く序詞。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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