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九重をかすみ隔つるすみかにも
春とつげくるうぐひすの声

歌の意味
宮中から霞に隔てられたこの住まいにも、春が来たと告げに来る鶯の声であることよ。
鑑賞
第一部 乙女

 源氏の歌に応じて、朱雀院が詠み返された歌である。譲位して仙洞御所に暮らす身の上を、宮中から遠く隔たった境涯として詠まれた。この後、かつて帥宮と申しあげ、今は兵部卿となっている宮が、今上の冷泉帝に御盃を差し上げて歌を詠み、帝もまた返される。やがて楽所が遠くて音がはっきり聞こえないため、御前に琴の類が召され、兵部卿宮が琵琶、内大臣が和琴、朱雀院が箏、源氏が琴を受け持って、たとえようもない合奏となった。

 「九重」は宮中、禁裏をいう。「かすみ隔つるすみか」は霞に隔てられた住まいで、宮中から遠く離れた仙洞御所をさす。「春とつげくるうぐひすの声」は、帝と源氏がこうして訪ねてきてくれたことをいう。表向きは春の訪れを喜ぶ挨拶の歌でありながら、みずからは霞の向こうに退いた身であるという寂しさが、ほのかに影を落としている。源氏の歌が桐壺帝の御代を懐かしむものであったのに対し、こちらは現在の境遇を嘆く色を帯びており、この二首が並ぶことで、続く兵部卿宮の歌の気配りが生きてくる仕組みである。

九重:宮中。禁裏。
かすみ隔つ:霞が隔てる。遠く離れていることをいう。
すみか:住まい。ここでは譲位後の仙洞御所。
つげくる:告げに来る。
うぐひすの声:春の訪れを告げる声。ここでは帝と源氏の来訪をさす。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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