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うぐひすの昔を恋ひてさへづるは
木伝ふ花の色やあせたる

歌の意味
鶯が昔を恋しがってさえずるのは、木々を伝って渡ってゆく、その花の色があせてしまったからだろうか。
鑑賞
第一部 乙女

 兵部卿宮の歌を受けて、御盃をお取りになった冷泉帝が詠まれた歌である。そのご様子はこよなく奥ゆかしくていらっしゃったと語られる。なおこの日の歌があまり伝わっていないのは、この催しが非公式の内々のことであったため盃が多くはめぐらなかったからか、あるいは書き落としてしまったのだろうかと、語り手はことわりを添えている。この後、楽所が遠くて音がはっきり聞こえないため、御前に琴の類が召され、名手たちによる合奏となり、殿上人が「安名尊」「桜人」を歌い、月が朧にさし出でるころ、中島のあたりに篝火を灯して大御遊びは終わった。

 「うぐひす」は春鶯囀を舞い奏する人々をさし、同時に昔を懐かしむ源氏や朱雀院を暗示している。「木伝ふ花」は鶯が木々を渡ってゆく先の花で、今その鶯が身を寄せる花、すなわち今上の御代をたとえる。「色やあせたる」は色があせたのだろうかの意で、人々が昔を恋うのは自分の治世が至らないからだろうか、とへりくだって問う形をとる。若い帝がみずからを省みてみせるのだから、その器量と奥ゆかしさがそのまま歌になっている。源氏
朱雀院
兵部卿宮の三首を受けて、四首がひとつづきの応答として過不足なく閉じられる構成である。

うぐひす:鶯。ここでは春鶯囀を奏し、昔を懐かしむ人々をさす。
木伝ふ:木から木へと渡ってゆく。
花:鶯が今身を寄せる花。今の御代のたとえ。
色やあせたる:色があせたのだろうか。今の御代が昔に及ばぬかと自省する。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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