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君にもしこころたがはば松浦なる
かがみの神をかけて誓はむ

歌の意味
あなたにもし私が心変わりをしたなら、松浦にいらっしゃる鏡の神にかけて誓いを立てよう。
鑑賞
第一部 玉鬘

 少弐が任地で亡くなったのちも一行は帰京できず、姫君は二十歳ばかりに成長して、そのあたりでは評判の的となっていた。肥後に一族の多い豪族、大夫監が、ひどい不具があっても我慢して大切にすると熱心に言い寄り、乳母たちが気味悪がって尼にすると断ると、かえって不安がって強引に肥前まで越えてきた。乳母の息子三人のうち二人は監に味方し、長兄の豊後介だけが故少弐の遺言を守って上京を主張する。監はみずから乗り込んで都風にふるまい、長々と口説き立てたあと、帰りぎわに歌を詠みたくなって、しばらく思いめぐらしてから詠んだのがこの歌である。

 「松浦なるかがみの神」は肥前松浦の鏡神社の祭神で、誓約の証人として持ち出される。「かけて誓はむ」は神の名にかけて誓おうということ。ただし「心たがはば」すなわち心変わりをしたなら、と言いながら、その場合にどうするのかが示されぬまま結ばれてしまい、続き方がひどくぎこちない。歌そのものの拙さが、都人を気取ろうとする田舎武士の姿を余さず映し出している。「この和歌は上出来と存じますぞ」と自賛して笑う無邪気さと、その傍らで生きた心地もしない女たちとの落差が、この場面の可笑しさであり、同時に恐ろしさでもある。

君:あなた。ここでは玉鬘。
心たがふ:心変わりする。約束にそむく。
松浦:肥前の松浦。玄界灘に面した一帯。
かがみの神:鏡神社の祭神。誓いの証人とされる。
かけて誓ふ:神仏の名を引き合いに出して誓う。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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