年を経ていのる心のたがひなば
かがみの神をつらしとや見む
- 歌の意味
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長年にわたって祈ってきた願いがかなわないのであれば、鏡の神をつらいものとお恨み申しあげることになろうか。
- 鑑賞
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第一部 玉鬘
監に歌を詠みかけられて、返歌をしないわけにもいかない。乳母は生きた心地もせず、娘たちに詠ませようとするが、娘は「私はなおさら何が何やら」と言って座りこんでいる。あまり間があいて困り果てた乳母が、思いつくままに震えながら口に出したのがこの歌である。監が「まて、これは何と仰せられたか」と不意に寄ってくる気配に、乳母は顔色を失った。娘たちが気を強く持ち、姫君には普通と違うところがあるので縁に背けば後悔なさろうという意味だ、もうろくした者が神を引き合いに言い間違えたのだと取りつくろって聞かせる。監は納得して機嫌を直し、もう一首詠もうとしたができなかったのか、そのまま立ち去った。
「年を経て」は長年にわたっての意。「いのる心」は、姫君を都に帰し、ふさわしい縁にめぐりあわせたいという乳母の年来の願いをいう。「たがひなば」は願いが食い違ってしまったなら、「つらしとや見む」は恨めしく思うことになろうか、ということ。監の歌の「たがはば」「かがみの神」をそのまま受けて返す形を取りながら、こめられているのは監との縁組への明確な拒絶にほかならない。同じ語を用いて意味を裏返す返歌の技法が、ここでは身の危険と隣り合わせの機転として働いている。震え声で詠まれたこの一首が、結果として一行の夜逃げへの転機となった。
年を経て:長年にわたって。
いのる心:祈願する心。ここでは玉鬘の幸いを願う心。
たがふ:くいちがう。かなわない。
つらし:恨めしい。冷淡だ。
とや見む:…と思うことになろうか。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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