行くさきも見えぬ波路に舟出して
風にまかする身こそ浮きたれ
- 歌の意味
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行く先も見えない波路に舟出して、風にまかせて漂うわが身は、なんと頼りなくつらいことか。
- 鑑賞
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第一部 玉鬘
兵部の君の歌に唱和した一首である。詠んだあと、姫君はまったく心もとない気持ちがして、うつ伏せに横になっていらっしゃる。逃げたことが人づてに伝われば、監が負けん気を起こして追ってくるだろうと一同は気をもむが、特別に仕立てた早舟である上に、思うような順風にも恵まれて、危ういほどの速さで都へ走り上った。
「行くさき」は行く先で、そのまま将来をも指す。「波路」は海路のこと。「風にまかする」は風の吹くにまかせて進む意で、自分の意志では何ひとつ決められない身の上をいう。「浮きたれ」の「浮き」に「憂き」を掛け、水に浮かぶ舟と、つらい身の上とを重ねている。兵部の君の「浮島」の「浮」を受けて、こちらは「身こそ浮きたれ」と結び、同じ掛詞を引き継いで唱和する形になっている。四歳で都を離れ、二十歳を過ぎてなお素性も知られぬまま連れ戻される姫君の境涯が、この一首に凝縮している。
行くさき:行く先。将来。
波路:海路。船で行く道。
舟出す:舟を出す。船出する。
風にまかす:風の吹くにまかせる。
浮きたれ:「浮き」に「憂き」を掛ける。頼りない、つらいの意。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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