数ならぬみくりやなにのすぢなれば
うきにしもかく根をとどめけむ
- 歌の意味
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人の数にも入らないわが身は、いったい何の筋があって、三稜が泥に根を下ろすように、このつらい世に生まれつき、とどまってきたのだろうか。
- 鑑賞
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第一部 玉鬘
源氏の文を、右近は御前を下がってから自分で届け、仰せ言を伝えた。姫君への装束や女房たちへの衣料など贈り物も多く、紫の上にも相談の上で選ばれた品々は、田舎じみた目にはいっそうめずらしいほどであった。姫君自身は、ほんの少しでも実の親からの便りであればうれしいのに、見も知らぬ方のもとへどうして出てゆけようと苦しく思うが、右近が身の処し方を教え、女房たちも、一人前におなりになれば内大臣も自然とお知りになるだろう、親子の縁は絶えてやまぬものだと慰める。まずは御返事をと勧められ、田舎じみていようと恥ずかしく思いながら、唐の紙にかすかに書いたのがこの歌である。
「数ならぬ」は人数にも入らない、取るに足らないという卑下の語。「みくり」の「み」に「身」を掛け、「うき」に「憂き」と、泥の意の「うき」とを掛ける。源氏の歌の「三稜」「すぢ」をそのまま受け取り、同じ語で身の上の嘆きに転じている。血筋を言われても、その筋ゆえに何ひとつ幸いはなかった、という応じ方であって、源氏の含みには乗らない。墨つきの薄いかすかな書きぶりも、そのままためらいを示している。筆跡は頼りなく弱々しいが、品があって悪くはないので、源氏はご安心なさったのだった。
数ならぬ:人数にも入らない。取るに足らない。卑下の語。
みくり:三稜。水草の名。「み」に「身」を掛ける。
すぢ:血筋、縁。
うき:「憂き」と、泥の意の「うき」とを掛ける。
根をとどむ:根を下ろす。とどまる。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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