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うす氷とけぬる池の鏡には
世にたぐひなきかげぞならべる

歌の意味
薄氷がとけて鏡のようになった池の面には、世に類のない私たちの姿が並んで映っていることだ。
鑑賞
第一部 初音

 源氏三十六歳の正月、六条院は一点の曇りもない元日の空に迎えられた。春の御殿の御前はとりわけ梅の香が御簾の内の薫香と吹きまじり、生きた仏の御国かと思われるほどである。女房たちは歯固めの祝をし、餅鏡まで取り寄せて年の内の祝い事をしてはしゃぎあっていたが、源氏が覗きこむと決まり悪がって恐縮する。源氏は笑って、私が祝い言をしてあげようと応じた。夕方、御方々のもとへ年賀に回ろうと念入りに装った源氏は、今朝の女房たちの遊びがうらやましく見えたから上には自分が餅鏡をお見せしようと言い、冗談口も交えながら祝い言を申しあげて、この歌を詠んだ。この日は元日と子の日が重なっており、千年の春をかけて祝うにふさわしい日であった。

 「うす氷」は薄く張った氷のこと。それが解けて澄みわたった池の面を鏡に見立て、そこに歯固めの祝に用いる餅鏡の姿をも重ねている。「かげ」は水に映る姿である。「世にたぐひなき」は世に並ぶもののないの意で、そこに映る二人の姿をたたえる言葉になっている。正月の祝儀の歌でありながら、池の面に並ぶ影という一点に、長年連れ添った夫婦のありようをそのまま託した。餅鏡
子の日
千年の春という新年の祝いの道具立てが、六条院の春の御殿の景色と一つに溶け合っている。

うす氷:薄く張った氷。
池の鏡:氷の解けた池の面を鏡に見立てた語。餅鏡を響かせる。
たぐひなし:並ぶものがない。比類がない。
かげ:水面に映る姿。
ならぶ:並んで映る。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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