年月をまつにひかれて経る人に
けふうぐひすの初音きかせよ
- 歌の意味
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年月を、小松に、いや姫君に心をひかれて待ちながら過ごしてきた者に、今日は鶯の初音を、年頭の初便りを聞かせてください。
- 鑑賞
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第一部 初音
元日、源氏が明石の姫君の御方に渡ると、女童や下仕えの女たちが御前の築山の小松を引いて子の日の遊びに興じている。若い女房たちも、じっとしていられないようすである。北の町の明石の君からは、今日のためにわざわざ集めたらしい髭籠や破子が届けられていた。えもいわれぬ五葉の松の作り枝に鶯の作り物がとまっており、何か心に思うところがあるかのようである。その贈り物に添えられていたのがこの歌で、「音せぬ里の」と書き添えてあった。源氏はまことにいたわしいと思い知り、正月早々に縁起でもない涙も抑えきれぬようすで、この返事は姫君ご自身でお書きなさいと硯を用意させるのだった。
「まつ」は小松に「待つ」を掛け、「ひかれて」は子の日の小松引きに寄せた「松」の縁語である。松にたとえられているのは、四年前に手放した明石の姫君その人であった。「経る」には「古る」が響く。「初音」は鶯の年内最初の鳴き声で、そこに正月最初の子の日である「初子」を掛け、姫君からの初便りを求めている。「音せぬ里の」は「今日だにも初音きかせよ鶯の音せぬ里はあるかひもなし」を引いたもので、便りひとつない里に住む甲斐のなさを訴える。巻名「初音」はこの歌に由来する。母娘を隔てた四年の歳月を、正月の祝いの道具立てにすべて託し、恨みがましくならぬよう言葉を選んでいるところに、明石の君の抑制がある。
まつ:「松」に「待つ」を掛ける。松は明石の姫君をさす。
ひかる:心をひかれる意に、小松引きの「引く」を掛ける。
経る:年月を過ごす。「古る」を響かせる。
初音:鶯の年内最初の鳴き声。年頭の初便りをいう。「初子」を掛ける。
音せぬ里:便りのない里。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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