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ひきわかれ年は経れども鶯の
巣だちし松の根をわすれめや

歌の意味
引き別れて年は経ってしまっても、鶯である私が、巣立った松の根、すなわち母君のことを忘れましょうか、いえ忘れはしません。
鑑賞
第一部 初音

 母君の歌への返しである。源氏は、初音を聞かせるのを惜しむべき相手でもありますまいと言って御硯を用意させ、姫君ご自身にお書かせ申しあげた。姫君の姿はまことに可愛らしく、明け暮れ拝見している者さえ見飽きないと思うほどであるから、実の母君が今までの長い年月を逢わずに過ごしてこられたのも罪作りなことだと、源氏は心苦しくお思いになる。この返しは、のちに明石の君の手習の中に「めづらしや」の歌を呼び起こすことになる。

 「ひきわかれ」は引き離されての意で、母の歌の「ひかれて」に応じ、小松引きの「引く」を受け継いでいる。「鶯」は自分自身、「松の根」は母である明石の君をさす。「わすれめや」は反語で、忘れましょうか、いえ忘れはしません、ということ。母が松に寄せて詠んだのを、そのまま松と鶯の関係に置き換えて答えた形である。ただし語り手は、幼い御心にまかせてお書きになったので、すんなりした歌にはなっていないと断っている。八歳の姫君の、技巧の行き届かぬ言葉の運びがそのまま書きとめられているところに、この場面の情がある。

ひきわかる:引き離される。「引く」は小松引きの縁。
経れども:年月が過ぎても。
巣だつ:雛が巣を離れる。
松の根:松の根もと。ここでは実母の明石の君をさす。
わすれめや:忘れようか、いや忘れはしない、という反語。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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