めづらしや花のねぐらに木づたひて
谷のふる巣をとへるうぐひす
- 歌の意味
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めずらしくうれしいことだ。花の宿りから木づたいに飛んできて、谷の古巣を訪ねてくれた鶯よ。
- 鑑賞
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第一部 初音
元日の暮れ方、源氏は明石の御方に渡る。渡殿の戸を押し開けるや御簾の内から薫香が優雅に吹き匂い、何よりも格別に気品高く思われる。当人の姿は見えず、見回すと硯のあたりに草子が散らしてあり、手に取ってご覧になる。侍従香を焚きしめた火桶、唐の錦の褥に置かれた琴など、いずれも由緒ありげである。手習の書きようは草書に走りすぎず、しっとりと品がよい。姫君からの返事をめずらしくうれしく思ったまま、しみじみとした古歌をまじえて書きつけてあったのがこの歌であった。源氏はそれを手に取ってほほ笑まれる。やがて明石の君がにじり出て、それでも遠慮がちにふるまうさまを、源氏はやはり人とは違うとお思いになり、新年早々の騒ぎになろうかと気兼ねしながらも、この町にお泊りになった。
「花のねぐら」は姫君の暮らす紫の上の御殿、「谷のふる巣」はみずからの住まいをいう。「木づたひて」は鶯が木から木へ移ることで、姫君が源氏に抱かれ紫の上に育てられている境涯を暗示する。「めづらし」はめったにない、うれしいの意である。谷を出て高い枝に移った鶯が古巣を訪ねるという趣向は『古今集』以来の春の歌の型であるが、ここではそれが我が子との関係にそのまま重なる。贈答の形をとらず、手習として書きつけられているところに、この歌の切なさがある。続けて「咲ける岡辺に家しあれば」と書きまぜてあるのも、姫君は花の御殿にいるのだから便りはいつでも聞けるのだと、みずからを慰めた筋であった。
めづらし:めったにない。うれしい。
花のねぐら:花咲く宿り。ここでは紫の上の御殿。
木づたふ:鳥が木から木へと移ってゆく。
ふる巣:古い巣。もとの住まい。
とふ:訪ねる。訪れる。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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