亀の上の山もたづねじ舟のうちに
老いせぬ名をばここに残さむ
- 歌の意味
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亀の背に載っているという蓬莱の山を訪ねる必要もない。この舟の中で、老いることのないという評判を、ここに残そう。
- 鑑賞
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第一部 胡蝶
舟遊びの折に詠み交わされた歌の一つである。若い女房たちは、行く先も帰るわが里も忘れてしまうほどに夢中になっており、それも当然だと語り手は水の面に言い寄せる。やがて日が暮れかかる頃、皇麞という楽がたいそう趣深く聞こえるなか、名残惜しいまま釣殿に漕ぎ寄せられて舟を降りた。釣殿の設えは簡素ながら優美で、御方々の若い女房たちが我劣らじと装った姿は、花をまぜた錦にも劣らぬ美しさであった。
「亀の上の山」は大亀の背に載っているという蓬莱山で、『列子』湯問篇に見える。不老不死の仙境である。「舟のうちに老いせぬ」は『白氏文集』の新楽府「海漫漫」に、蓬莱を求めた童男童女が舟の中で老いてしまったとあるのを踏まえ、それを裏返した。仙山を探しにゆくまでもない、この舟の上にこそ不老の境地があるというので、六条院の春の庭をそのまま蓬莱に見立てたことになる。前の二首が現実の歌枕を引いたのに対し、この一首は唐土の伝説を引き、遊びの趣向がいっそう広がっている。
亀の上の山:大亀の背に載っているという蓬莱山。不老不死の仙境。
たづねじ:訪ね求めまい。
老いせぬ:年を取らない。不老である。
名を残す:評判を残す。語り伝えられる。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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