春の日のうららにさして行く舟は
棹のしづくも花ぞちりける
- 歌の意味
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春の日がうららかに射す中を、棹をさして進んで行く舟は、棹からこぼれ落ちるしずくまでも、花が散っているようであることよ。
- 鑑賞
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第一部 胡蝶
舟遊びで詠み交わされた歌の最後の一首である。夜に入ると名残惜しくて、御前の庭に篝火をともし、御階のもとの苔の上に楽人を召して、上達部や親王たちもそれぞれ弾物
吹物を奏でられた。名手たちが双調を吹き、階上の御琴がそれを受けて「安名尊」を奏でる間、物の良し悪しも知らぬ身分の者までが門のあたりに立ちまじって聞き入り、生きた甲斐があったと顔をほころばせたのだった。一晩中の管弦の遊びは明け方まで続き、兵部卿宮が「青柳」を繰り返し歌い、源氏も声を添える。
「うらら」はうららかな春の日ざしのこと。「さして」は日が射す意と、棹をさす意とを掛けている。「棹のしづく」は棹を持ち上げるときにこぼれ落ちる水滴で、それを花びらが散るさまに見立てた。散る桜がそこらじゅうに漂う中を進む舟の景色を、しずくの一点にまで凝縮している。四首の中でもっとも技巧の目立たない、素直な叙景の歌であるが、それだけに舟遊びの一日をしめくくるにふさわしい。すべて「はかな事ども」と語り手は言うものの、こうした即興のやりとりが六条院の日常を彩っていることが伝わってくる。
うらら:春の日ざしのうららかなさま。
さす:日が射す意と、棹をさす意とを掛ける。
棹:舟を進めるための長い竿。
しづく:したたり落ちる水滴。
ちる:花が散る。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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