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ふちに身を投げつべしやとこの春は
花のあたりを立ちさらで見よ

歌の意味
淵に身を投げるほどのことができるかどうか、この春は花のあたりを立ち去らずに見ていらっしゃい。
鑑賞
第一部 胡蝶

 兵部卿宮の歌に応えた源氏の返しである。源氏はまことににっこりとほほ笑んでこの歌を詠み、強く引き止めなさるので、宮は立ち去ることもおできにならず、今朝の管弦の遊びは昨夜にもまして興深いものとなった。翌日は中宮の季の御読経の初日で、舟遊びに来ていた公卿たちもそのまま参列することになる。

 「ふち」は宮の歌をそのまま受けて、淵に藤を掛けている。「投げつべしや」は身を投げることができるだろうかという問いかけで、宮の誇張をやわらかく受け流している。「花のあたり」は藤の花のあたり、すなわち玉鬘のいる六条院をさす。立ち去らずに見ていなさいというのは、そう急がず、この春の宴を楽しみながら様子をご覧なさいという意である。求婚を退けるでもなく受け入れるでもなく、その場に引きとめておくという返し方であって、若者たちを玉鬘のまわりで争わせて楽しもうという源氏の思惑がそのまま歌になっている。宴席の応酬でありながら、玉鬘十帖の展開そのものを予告する一首である。

ふち:「淵」に「藤」を掛ける。前の歌を受ける。
投げつべしや:身を投げられるだろうか。
花のあたり:藤の花のあたり。ここでは玉鬘のいる六条院をさす。
立ちさる:その場を離れる。
見よ:見ていなさい。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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