ふるき跡をたづぬれどげになかりけり
この世にかかる親の心は
- 歌の意味
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古い物語の跡をたずねてみましたが、なるほど本当にございませんでした。この世に、このような親の心というものは。
- 鑑賞
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第一部 蛍
源氏の歌への返しである。ようやく、と語られるとおり、玉鬘は責め立てられた末にこの一首を申し上げた。あまりに気恥ずかしい返しであるから、源氏もそうひどく羽目をおはずしにはならなかった。こうしていったいどうなってゆく御関係なのだろうかと、語り手は先行きを案じて章を閉じる。このあと源氏は紫の上とも物語の教育上の影響について語り合い、明石の姫君に読ませる物語を選ばせるなど、話題は続いてゆく。
「ふるき跡」は源氏の歌の「昔のあと」をそのまま受けたものである。「げに」もまた、なるほど仰せのとおりと源氏の言葉を受ける語で、二句までは相手の理屈を素直に認める形をとる。ところが「かかる親の心」と結んで、例がないのは背く子ではなく、子に恋する親のほうだと言い返してみせた。同じ語を用いて主語だけを入れ替えるという、返歌の技法のもっとも鮮やかな例である。源氏がそれ以上乱れなかったのは、この一言が正面から急所を突いていたからにほかならない。物語論の華やかな議論の直後に置かれることで、この短い応酬はいっそう鋭く響く。
ふるき跡:古い物語に残された先例。
たづぬ:探し求める。調べる。
げに:なるほど。まことに。
かかる:このような。
親の心:親としての心。ここでは子に恋情を抱く心をいう。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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