なでしこのとこなつかしき色を見ば
もとの垣根を人やたづねむ
- 歌の意味
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撫子の、いつまでも心惹かれる色を見たなら、その花がもとは誰の垣根に咲いていたのかと、人は尋ね求めるだろう。
- 鑑賞
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第一部 常夏
盛夏の六条院、源氏は釣殿で涼み、夕霧を訪ねてきた内大臣家の子息たちを相手に、近ごろ引き取られたという落胤の姫君、近江の君の噂を持ち出して皮肉る。夕暮れになっても誰も帰らず、源氏が西の対の玉鬘のもとへ渡ると、噂の姫君を一目見たい若者たちがみなついて来た。月のない夜なので篝火を召し、源氏は和琴を引き寄せて掻き鳴らし、和琴こそ楽器の親であること、当代でこの道の第一人者は内大臣であることなどを語って聞かせる。玉鬘は実の父の音を聞きたいという思いをつのらせるが、源氏は「耳固からぬ人のためには」と皮肉を言って琴を押しやる。女房たちが近くにいるので冗談も言えぬまま、内大臣にもこの花園を見せたいものだと切り出して詠んだのが、この歌である。
「なでしこ」は玉鬘をたとえる。「とこなつかしき」は「常夏」すなわち撫子の異名に、「なつかし」の意を重ねた語で、「とこ」に「床」を掛けるとも解される。「もとの垣根」はもと生えていた垣根、すなわち素性のこと。「人」は内大臣をさす。あまりに美しいのだから、どのような素性かと父君は必ず詮索するだろう、そうすれば実の子だと知れてしまう、という理屈である。雨夜の品定めで頭中将が常夏の女と幼い撫子について語ったこと、そして頭中将と夕顔のあいだで交わされた撫子の贈答が、そのままここに引き継がれている。巻名「常夏」はこの歌に由来する。
なでしこ:撫子。常夏の花。ここでは玉鬘をたとえる。
とこなつかし:「常夏」に「なつかし」を掛けた語。心惹かれる。
もとの垣根:もと生えていた垣根。素性のたとえ。
人:ここでは実父の内大臣をさす。
たづぬ:探し求める。詮索する。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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