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草わかみひたちの浦のいかが崎
いかであひ見んたごの浦浪

歌の意味
草も若い常陸の浦のいかが崎、そのいかがではないが、どうにかしてお会いしたいものです、田子の浦波のように。
鑑賞
第一部 常夏

 内大臣が近江に見つけ出して引き取った娘、近江の君は、早口で落ち着きがなく、双六に夢中になるなど、その言動が家中の持て余しものとなっていた。内大臣はしつけのつもりで、里下がり中の弘徽殿女御に預けようと考え、そのまま女御のもとへ参るよう命じる。近江の君は、渋々の態度では失礼だ、大臣がいくら大切にしてくださっても御方々に冷たくされては邸内に居場所がないと言って、まず手紙を差し上げる。古歌の言葉を次から次へと引き、畳み字を多用した文面に添えられていたのがこの歌であった。青い色紙を二枚重ね、草仮名だらけで角張った筆跡は誰の書風ともつかず、行は端へ行くほど傾いて倒れそうに見えるが、当人はにこにこしながら眺めている。それを細く小さく結んで撫子の花に付け、便所掃除の女童に持たせて台盤所へ届けさせた。

 「草わかみ」は草が若いのでの意。「ひたちの浦」は常陸、「いかが崎」は近江、「たごの浦」は駿河の歌枕である。「いかが崎」は「いかで」を導く序詞として働き、歌の趣旨は、どうにかしてお会いしたい、という一点に尽きる。ところが、まるで関連のない土地の名ばかりを次々に並べ立てるため、全体としてはちぐはぐな出来になっている。歌枕を駆使すれば格調が上がると思いこんでいるところに、この人の教養のちぐはぐさが表れる。ただし語り手は近江の君を嘲弄しきってはおらず、細く結んで花に付けるという作法だけは律儀に守っているさまなどに、微笑ましさをこめて描いている。

草わかみ:草が若いので。
ひたちの浦:常陸国の浦。歌枕。
いかが崎:近江国の地名。「いかで」を導く序詞。
いかであひ見ん:どうにかしてお会いしたい。
たごの浦浪:駿河国田子の浦の波。歌枕。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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