おほかたに荻の葉すぐる風の音も
うき身ひとつにしむ心ちして
- 歌の意味
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ありふれた風が荻の葉を吹きすぎてゆく音でさえ、つらいわが身ひとつには、しみじみと心にしみる思いがして。
- 鑑賞
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第一部 野分
八月、中秋の六条院を激しい野分が襲った。庭の草花は倒れ伏し、そのころ訪れた夕霧は混乱のなかで偶然に紫の上の姿を垣間見て、その美しさに衝撃を受ける。翌朝、源氏は夕霧を供に連れて御方々を見舞ってまわった。中宮の御殿を出てそのまま北へ通り、明石の御方の住む冬の町を見やると、しっかりした家司らしい者も見えず、下仕えの女たちが草の中を歩きまわっている。心をこめて植えた龍胆や朝顔の絡む籬もみな散り乱れ、女童たちがそれを引き起こしては探しているようすである。明石の君は胸ふさがる思いのまま箏の琴をかき鳴らして端近に座っていたが、先払いの声を聞いて、なえた普段着の上に小袿を羽織ってけじめを示す。源氏は端の方に少し座って風の見舞いを述べただけで、そっけなく立ち帰ってしまわれた。その後ろ姿を見送りながら独りごちたのが、この歌である。
「おほかたに」はありふれた程度に、通りいっぺんにの意である。「荻の葉すぐる風」は荻の葉を吹きすぎてゆく風で、「荻の葉」は明石の君自身、「風」は源氏をたとえる。「うき身ひとつ」はつらい我が身ひとつということ。表向きは、野分でなくとも荻を渡る風の音は心にしみるという叙景であるが、その裏で、泊まりもせぬ通りいっぺんの見舞いですら、この身にはこたえるのだと訴えている。「おほかたに」の一語が景と情の両方にかかるところが眼目である。詠みかけるのでも書き送るのでもなく、独り言として漏らされるところに、身分をわきまえて出過ぎまいとする明石の君の生き方がそのまま表れている。
おほかたに:ありふれた程度に。通りいっぺんに。
荻の葉:荻の葉。ここでは明石の君自身をたとえる。
すぐる:通り過ぎてゆく。
うき身:つらい我が身。
しむ:しみじみと心にしみる。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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