吹きみだる風のけしきに女郎花
しをれしぬべき心地こそすれ
- 歌の意味
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吹き乱れる風のようすに、女郎花がしおれ果ててしまいそうな心地がすることです。
- 鑑賞
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第一部 野分
源氏は続いて西の対の玉鬘のもとへ渡る。玉鬘は昨夜の風を恐ろしく思いながら明かした名残で寝過ごし、ちょうど鏡を見ているところであった。源氏はおおげさな先払いを禁じて静かに入り、例のごとく風の見舞いにことよせて懸想じみた戯れ言を仕掛ける。玉鬘が、こんなに嫌な思いをするなら昨夜の風にさらわれてしまいたかったと機嫌を悪くすると、源氏は笑って、風について行ってしまわれるのは軽率でしょうなどと言い返す。そのやりとりを、夕霧が隅の間の御簾をそっとひき上げて覗き見ていた。親子と申しながらこれほど近く寄り添うものだろうかと目をとめ、やがて源氏が柱隠れの玉鬘を引き寄せるのを見て、なるほど父上のご性分ならばと嫌悪を覚える。人払いされたなかでこまやかに語らったのち、源氏が急に真顔になって立つ。そのとき玉鬘が詠んだのがこの歌である。
「吹きみだる風」は強引に迫る源氏をたとえる。「女郎花」は自分自身で、秋の草花のなかでも弱々しくしなやかなものとして選ばれている。「しをれしぬべき」はしおれて死んでしまいそうだ、の意で、「しぬ」は完了の助動詞に「死ぬ」を響かせるとも読める。野分に打たれた庭の景をそのまま我が身の窮状に重ねた仕立てであって、拒みながらも直接には言わず、草花に託して訴えるところに玉鬘の慎ましさがある。夕霧は詳しくは聞き取れなかったが、源氏がこの歌を口ずさむのをほのかに聞き、いまいましくもあり気にもなって、なお見ていたいと思いつつ立ち去るのだった。
吹きみだる:吹き乱れる。ここでは強引に迫る源氏をたとえる。
けしき:ようす。ありさま。
女郎花:秋の七草の一。ここでは玉鬘自身。
しをる:草木が力を失ってうなだれる。
しぬべき:…てしまいそうだ。「死ぬ」を響かせる。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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