風さわぎむら雲まがふ夕べにも
わするる間なく忘られぬ君
- 歌の意味
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風が騒ぎ、むら雲が入り乱れる夕方にも、忘れる間もなく忘れられないあなたであることよ。
- 鑑賞
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第一部 野分
源氏の供をして御方々をめぐり歩いた夕霧は、なんとなく気落ちし、書きたい手紙も書けぬまま日が高くなったのを気に病んで、明石の姫君の御方に立ち寄った。姫君はまだ紫の上のもとにおられるという。乳母に紙と硯を求めると、姫君ご自身の御厨子から巻紙と硯の蓋が差し出されるので、これでは畏れ多いと言いながらも、母君の御身分を思えばこれでもよかろうと思い直して筆を執る。紫の薄様に、墨をていねいに擦り、筆の先を見つめながらこまやかに書きよどむさまは、まことに堂に入っていた。ただし歌のほうは妙に型どおりで、まずい詠みぶりであると語り手は容赦がない。これを風に吹き乱された刈萱に結びつけて、雲居雁のもとへ届けさせたのである。
「風さわぎ」「むら雲まがふ」は、いずれも昨夜からの野分の景をそのまま置いたものである。「わするる間なく忘られぬ」は、忘れる間もなく忘れられないということで、同じ語を重ねて思いの絶えまなさを言う。素直といえば素直だが、掛詞も見立てもなく、景と情がただ並んでいるだけで、余情に乏しい。折よく手にした刈萱に結んだのも、「まめなれどよき名も立たず苅萱のいざ乱れなむしどろもどろに」の心を含むのだろうが、女房たちからは、交野の少将なら紙の色まで合わせたものですよと軽口を叩かれてしまう。まじめ一方の夕霧が、恋の作法にはいかにも不器用であることを、この一首が端的に示している。
風さわぐ:風が激しく吹き騒ぐ。
むら雲:群がり集まった雲。
まがふ:入り乱れる。見分けがつかなくなる。
わするる間なく:忘れる間もなく。
刈萱:秋の七草の一。ススキに似た草。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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