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ふたかたに言ひもてゆけば玉櫛笥
わが身はなれぬ懸子なりけり

歌の意味
どちらの方から言い進めていっても、玉櫛笥のように、あなたは私の身から離れない懸子、すなわち孫なのでした。
鑑賞
第一部 行幸

 源氏は三条宮に大宮を見舞い、長い語らいの末に玉鬘の素性を打ち明けた。やがて呼ばれて来た内大臣にも、雨夜の品定めの昔話まで持ち出しながら真相を明かす。二人は泣いたり笑ったりして打ち解け、内大臣は喜んで腰結の役を引き受けた。裳着は二月十六日、彼岸の初日と定められる。当日、三条宮からひそかに御使いがあり、急なことながらみごとに調えた御櫛の筥などが届けられた。文には、縁起でもない尼姿ゆえ今日は身を慎んでおりますが、長生きの例としてだけはお許しいただけようかと思って、とあり、この歌が添えてあった。ひどく古めかしく、震える手で書かれている。

 「ふたかた」は二つの方面の意で、玉櫛笥の「蓋」を掛ける。玉鬘は内大臣の娘であるから大宮の孫であり、また源氏の養女であるなら、婿である源氏を介してやはり孫にあたる。どちらから数えても孫なのだ、というのがこの歌の骨である。「玉櫛笥」は櫛箱の美称で、贈った品にちなむ。「わが身」の「身」は蓋に対する箱の身を掛け、「懸子」は箱の中にはめこむ小箱で、「子」を響かせる。三十一字のうち関わりのない語がほとんどないと源氏が笑うほど、縁語尽くしで編まれた一首である。技巧は古風だが、孫であると言い切るところに、老いた祖母の情がにじむ。

ふたかた:二つの方面。玉櫛笥の「蓋」を掛ける。
言ひもてゆく:言い進めてゆく。
玉櫛笥:櫛箱の美称。「玉」は美称。
わが身:自分自身と、箱の「身」とを掛ける。
懸子:箱の中にはめこむ小箱。「子」を響かせる。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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