唐ころもまたからころもからころも
かへすがへすもからころもなる
- 歌の意味
-
唐衣、また唐衣、唐衣。返す返すも唐衣であることよ。
- 鑑賞
-
第一部 行幸
源氏は末摘花の歌を見て、返事はお出しなさい、決まり悪く思うだろうから、と玉鬘に申されたが、思い直して、この返事は忙しくとも自分がしようとおっしゃる。そして、人が思いつかないようなお心遣いは、なさらないほうがましなのですよ、と憎らしげに書き出して、この歌を詠まれた。あの方がとくに好んでいる文句なので自分も詠んだのです、と言って玉鬘に見せると、姫君はにこやかに笑って、まあお気の毒な、からかっているようでございますこと、と困った顔をなさる。つまらないことを実にたくさん書きとめたものだ、と語り手は結んでいる。
三十一字のうち「唐ころも」を四度も繰り返すという、およそ和歌らしからぬ一首である。末摘花が末摘花巻以来くり返し「唐衣」を詠み込んできたことへの、あからさまな揶揄にほかならない。「かへすがへす」は繰り返しの意で、「返す」に衣を返す意を掛け、これも唐衣の縁語として働いている。「唐衣日も夕ぐれになる時はかへすがへすぞ人は恋しき」を踏まえるとされる。戯れ歌としては痛烈であるが、それでも必ず返事を書き、贈り物を無下にはしないところに、源氏のこの人への扱いのむずかしさと、変わらぬ情とが同時にあらわれている。
唐ころも:唐風の上着。末摘花が好んで詠み込む語。
また:繰り返して。重ねて。
かへすがへす:繰り返し。何度も。「衣を返す」意を掛ける。
なる:…である。断定。
- 作者
-
紫式部
- 出典
-
源氏物語
- その他の歌
-