うらめしやおきつ玉もをかづくまで
磯がくれけるあまの心よ
- 歌の意味
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恨めしいことだ。沖の玉藻を潜って採るまで、いや裳を着けるこの日まで、磯に隠れていた海人の、あなたの心よ。
- 鑑賞
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第一部 行幸
裳着の当日、内大臣は思いのほか早く六条院に参られた。儀式はなすべき作法をこえて格別に立派にととのえられており、なるほどわざわざ心を尽くしてくださったことだと、畏れ多くも風変わりにも思われる。亥の刻に御簾の内へ通され、御殿油をふだんより明るくして、姫君の姿がほのかに浮かぶよう取り計らってある。娘の顔を見たくてならぬが、今宵は急にすぎるので思いとどまり、裳の腰紐を引き結ぶときには涙を抑えかねるようすであった。源氏が、今宵は昔のことには触れませんから世の常の作法でと釘を刺すと、内大臣も承知しつつ、盃を取る折に、限りないご親切とは存じますが今まで隠していらしたお恨みも申し添えずにおられません、と言ってこの歌を詠み、なおこらえきれずに涙をこぼされた。
「うらめしや」の「うら」に「浦」を掛ける。「おきつ玉も」は沖の玉藻で、「も」に「裳」を掛け、裳着にちなむ。「かづく」は水に潜って採る意と、衣を着る意とを掛ける。「磯がくれ」は磯に隠れていることで、名乗り出ずにいたことをいう。「あま」は海人で、ここでは玉鬘をさす。浦
沖
藻
かづく
磯隠れ
海人と、海の縁語を一首に敷き詰めた技巧の歌である。表向きは娘への恨み言でありながら、実際に向けられているのは、長く真相を伏せていた源氏にほかならない。宴席の作法を守りつつ抗議を忍ばせる、内大臣らしい一首である。
うらめし:恨めしい。「浦」を掛ける。
おきつ玉も:沖の玉藻。「も」に「裳」を掛ける。
かづく:水に潜って採る意と、衣を着る意とを掛ける。
磯がくる:磯に隠れる。姿を隠す。
あま:海人。ここでは玉鬘をさす。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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