妹背山ふかき道をばたづねずて
をだえの橋にふみまどひける
- 歌の意味
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妹背山のように姉弟であるという深い事情をたずねもせずに、緒絶えの橋のあたりで、文を送り、恋の道に踏み迷っていたことです。
- 鑑賞
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第一部 藤袴
喪が明け、玉鬘の出仕は十月と定まった。求婚者たちは誰もが残念がり、つてを頼んで女房たちに訴えるが、引き止めるのは吉野の滝をせき止めるより難しいと断られる。かつて熱心に言い寄っていた頭中将(柏木)は、実の姉と知ってからぱたりと絶えていたので、女房たちがあっさりした御心ですこととおもしろがっていたところへ、内大臣の使いとして訪れた。月の明るい夜、桂の木陰に隠れて立ち、これまでは相手にされなかったのが、今度はすっかり南の御簾の前に通される。玉鬘は直接応対することはやはり気が引けて、宰相の君を介してやりとりし、ひたすらきまじめに応じるので、柏木は言いたいことを胸にしまいこみ、この歌を詠んだ。
「妹背山」は吉野川と紀の川の両岸に向き合う二つの山で、ここでは姉弟であることの象徴として用いる。「ふかき道」はその奥深い事情、すなわち二人が実の姉弟であるという真相をいう。「をだえの橋」は陸奥の歌枕で、「緒絶え」から仲が絶える意を響かせる。「ふみ」は文と踏みとを掛け、恋文を送ったことと恋の道に踏み迷ったこととを重ねる。歌枕を二つ並べて我が身の迷いを言い当てる技巧であるが、恨むといっても誰に言われたわけでもなく自分から始めたことなので、どうしようもないと語り手は添えている。実の姉と知ったのちの、痛切でありながら行き場のない述懐である。
妹背山:吉野川
紀の川の両岸に向き合う二つの山。歌枕。姉弟の象徴。
ふかき道:奥深い事情。ここでは実の姉弟であるという真相。
をだえの橋:陸奥の歌枕。「緒絶え」から仲が絶える意を響かせる。
ふみ:「文」と「踏み」とを掛ける。
まどふ:道に迷う。心が乱れる。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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