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まどひける道をば知らで妹背山
たどたどしくぞたれもふみみし

歌の意味
あなたが踏み迷っていた道も知らず、妹背山の縁も知らないまま、誰もがおぼつかない気持ちで文を見ていたのです。
鑑賞
第一部 藤袴

 柏木の歌への返しである。宰相の君が取り次いで、どういう意味かとお分かりにならなかったようでございました、姫君は何ごとにつけても理不尽なまでに世間へお気がねなさるので、御返事も申し上げられないのでしょう、いつまでもこのままではございますまい、と言い添える。それももっともなので、柏木は、長居をするのもまだよろしくない時期です、しだいにお役に立つことが増えてから恨み言も申し上げましょう、と言って立たれた。月が隈なくさし上り、直衣姿の柏木は華やかで美しく、夕霧には及ばぬものの立派なので、若い女房たちは例によって褒めそやすのだった。

 「まどひける道」は柏木の歌の「ふみまどひける」を受け、恋に迷った道をいう。「妹背山」も相手の語をそのまま引き取ったもの。「たどたどしく」はおぼつかなく、はっきり分からぬままにの意である。「ふみみし」も「文」と「踏み」を掛け、これも相手の掛詞をそっくり継承している。相手の用いた語をひとつ残らず用いて返すのは返歌の作法であるが、注目すべきは結句で、本来なら「我もふみみし」と言うべきところを「たれも」とぼかしている。自分ひとりの心を明かすことを避けたのであって、この一語に玉鬘の慎重さが凝縮している。

まどふ:道に迷う。心が乱れる。
妹背山:姉弟の象徴。前の歌を受ける。
たどたどし:おぼつかない。はっきりしない。
ふみみし:「文を見る」と「踏み見る」とを掛ける。
たれも:誰でも。自分を明示することを避けた言い方。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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