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朝日さすひかりを見ても玉笹の
葉分の霜を消たずもあらなむ

歌の意味
朝日のさす光を御覧になっても、玉笹の葉を分けて置く霜のような私を、消してしまわないでいてほしいものです。
鑑賞
第一部 藤袴

 同じ朝、兵部卿宮からも文が届いた。「もう言っても仕方のないことですから、申し上げようもございませんが」と書き出して、この歌が記されている。「せめて私のこの気持ちをお知りくださるだけでも、慰められようがございましょう」と添えてあった。使いの者は、たいそう力なくしなった下折れの笹を、霜も落とさずに持って参ったのであって、そのふるまいまでもいかにも宮らしいと語り手は言う。この日の文はほかにも多く、式部卿宮の左兵衛督からも恨み言が重ねられ、紙の色も墨つきも焚きしめた香もさまざまであるのを、女房たちは、みな思いを絶ってしまわれるのは寂しいことだと言い合っていた。

 「朝日さすひかり」は帝をたとえる。「玉笹」の「玉」は美称で、玉鬘その人をさす。「葉分の霜」は笹の葉を分けて置く霜で、宮みずからをたとえたものである。神楽歌の「朝日子が、さすや岡辺の、玉笹の上に」や、「玉笹の葉分けにおける白露の」といった古歌を背景に持つ。帝の御威光を目にしても、笹の葉かげの霜のような取るに足らぬ私を、朝日に溶かすように消し去ってはくれるな、という訴えである。霜という消えやすいものに我が身を託し、朝日に対しては争わず、ただ残してほしいと願うところに、この宮らしい優雅さと諦めの深さがある。しなった笹に霜を落とさず届けさせた趣向とも、みごとに響き合っている。

朝日さす:朝日が照らす。「ひかり」を導く。
ひかり:光。ここでは帝をたとえる。
玉笹:笹の美称。ここでは玉鬘をさす。
葉分の霜:葉を分けて置く霜。ここでは兵部卿宮自身のたとえ。
消たず:消さないで。
あらなむ:あってほしい。願望。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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