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数ならばいとひもせまし長月に
命をかくるほどぞはかなき

歌の意味
人の数にも入らぬ並みの思いであれば、この長月をこそ厭わしく思ったでしょう。それなのに、この一月に命をかけて頼みにしているのが、はかないことです。
鑑賞
第一部 藤袴

 九月になった。初霜が結び、風情のある朝、例によって求婚者それぞれの仲立ちをする女房たちが、それとなく引き隠しては持って参る手紙の数々を、玉鬘は御覧になることもなく、女房が読み上げるのを聞くばかりである。髭黒大将の文には、九月中はまだ出仕なさらぬことを頼みにしてきたが、それでも移りゆく空のけしきを見ているといたたまれなくなる、とあって、この歌が添えられていた。出仕は月が改まってからと定まっていることを、大将は柏木を通じてよく聞き知っているようである。髭黒はこの縁組にひときわ執心しており、玉鬘つきの弁のおもとをも責め立てて、実の親である内大臣の心さえ違わなければと迫っていた。

 「数ならば」は人の数にも入らぬ程度の身であればの意で、ここでは思いの浅い並みの求婚者であればということ。「長月」は九月で、出仕までに残された最後の一月である。九月は結婚を忌む月とされたから、並みの者ならこの月をこそ厭わしく思うはずだ、という理屈が背景にある。ところが自分は思いが強いばかりに、かえってこの残された一月にこそ望みをつないでしまう、そのはかなさよ、と嘆いてみせる。世間並みの者との比較によって自分の思いの深さを訴える構えであって、色めいたところのない実直な人柄が、こうした理詰めの詠みぶりにも表れている。この人がやがて思いがけない形で玉鬘を手に入れることになる。

数ならば:人の数に入るほどの、並みの者であれば。
いとふ:嫌う。厭わしく思う。
まし:…であっただろうに。反実仮想。
長月:陰暦九月。結婚を忌む月とされた。
命をかく:命がけで頼みとする。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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