心もて光にむかふあふひだに
朝おく霜をおのれやは消つ
- 歌の意味
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みずから望んで光に向かう葵でさえ、朝置いた霜を自分から消すことがあるでしょうか、ありはしません。
- 鑑賞
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第一部 藤袴
届いた多くの文のうち、玉鬘は兵部卿宮への返事だけを、どうお思いになったのか、ほんの少しだけ書いてお送りになった。それがこの歌である。宮はたいそう珍しいと御覧になり、姫君ご自身が自分の情けを分かっていらっしゃるようなご様子を匂わせているので、ほんの露ほどのことではあったが、まことにうれしくお思いになった。こうして、何ということもないながら、出仕にさいしてはさまざまな人々の恨み言が多かったのである。女の心の持ちようは、この君を手本とすべきであると、両大臣が評定なさったとかいうことだ、と語り手はこの巻を結んでいる。
「あふひ」は日に向かって咲く葵で、みずから進んで帝のもとへ参る者のたとえである。「光」は宮の歌の語をそのまま受け、帝をさす。「朝おく霜」もまた宮の歌を受け、宮自身をたとえる。「おのれやは消つ」は反語で、自分から消したりはしない、ということ。すすんで日に向かう葵でさえ霜を消しはしないのだから、まして自分から望んで出仕するのでもない私が、あなたを忘れるはずがありません、というのである。相手の語を残らず引き取ったうえで、葵という一語を加えるだけで意味を反転させる手際が鮮やかで、しかも情けを解しているとだけ伝えて何ひとつ約束はしていない。多くの求婚者に言い寄られながら悪評ひとつ立てずにおさめたこの人の思慮が、この短い一首によく表れている。
心もて:自分の意志で。みずから進んで。
光:ここでは帝をたとえる。
あふひ:葵。日に向かって咲くという。
朝おく霜:朝置く霜。ここでは兵部卿宮をたとえる。
やは消つ:消すだろうか、いや消しはしない、という反語。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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