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みつせ川わたらぬさきにいかでなほ
涙のみをのあわと消えなん

歌の意味
三途の川を渡ってしまう前に、どうにかして、涙の川の水脈に立つ泡となって消えてしまいたいものです。
鑑賞
第一部 真木柱

 源氏の歌への返しである。玉鬘は顔を隠したまま詠んだ。源氏は「それが貴女の幼い御心の落とし所ですか。そうはいっても、かの瀬は避けようがないというのですから、御手の先だけでも私が引き助けてさしあげましょうか」とほほ笑まれ、続けて、世にたぐいない私の愚かさも、それゆえの気安さも分かっていただけているだろうと、まじめに語られる。玉鬘が耐えがたく聞き苦しく思っているようすなので、源氏は話をそらし、帝の思し召しが痛々しいのでやはりひととき出仕させ申し上げよう、と勧める。そして思うままに乱れたふるまいはなさらず、出仕にあたっての心得だけを教えられた。大将邸へ移ることは、すぐにはお許しになりそうもないご様子である。

 「みつせ川」は三途の川で、源氏の歌の「渡り川」を受ける。「みを」は水脈で、涙の川の流れをいう。「あわと消えなん」は泡となって消えてしまいたいの意で、川の縁語仕立てである。三途の川を渡る前に、その手前の涙の川で消えてしまいたい、というのだから、髭黒との縁そのものを断ち切りたいという願いになる。源氏がこれを「心幼の御消え所や」と評したとおり、なるほど死を願うほかに逃れ道を思いつかぬ言い方ではあるが、そこにこの人の追い詰められようが端的に出ている。

みつせ川:三途の川。前の歌の「渡り川」を受ける。
みを:水脈。水の流れる筋。
あわ:泡。はかないもののたとえ。「川」の縁語。
いかでなほ:どうにかしてやはり。
消ゆ:消える。死ぬ。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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