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浅けれど石間の水はすみはてて
宿もる君やかけはなるべき

歌の意味
浅いけれども石の間の水は澄みきって住みつづけるのに、この家を守っておられた御方が離れてゆかれるとは、どうしたことでしょう。
鑑賞
第一部 真木柱

 北の方の一行が邸を去るにあたっての、女房どうしの別れの歌である。木工の君は大将付きの女房としてこの家にとどまり、中将のおもとは北の方に従って出てゆくことになった。中将のおもとがこの歌を詠みかけ、「思いもかけなかったことです。こうして貴女ともお別れ申し上げることですね」と言った。二人はともに大将の情けを受けた身であり、その一方が残り、一方が去るという分かれ目に立たされている。

 「石間の水」は石の間を流れる浅い水で、大将との関係が浅い木工の君をたとえる。「すみはてて」は水が澄みきる意に「住み果てる」を掛け、この家に住みつづけることをいう。「宿もる君」は家を守る人、すなわち北の方である。「かけはなる」は離れてゆく意に、水面に映る「影」を響かせる。関係の浅いあなたが残り、家の主である北の方が去るとは道理に合わない、という羨みと嘆きが一首に込められている。水の縁語を軸に立場の逆転を言い当てた、女房らしい機知のきいた別れの歌である。

浅し:水が浅い。関係が深くない。
石間の水:石の間を流れる水。ここでは木工の君のたとえ。
すみはつ:水が澄みきる意に「住み果てる」を掛ける。
宿もる君:家を守る人。ここでは北の方。
かけはなる:離れ去る。「影」を響かせる。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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