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深山木に羽うちかはしゐる鳥の
またなくねたき春にもあるかな

歌の意味
深山木に羽を交わしてとまっている鳥のように、あなたが人と添っておられるのが、またとなくねたましい春であることよ。
鑑賞
第一部 真木柱

 年が改まり、髭黒もようやく玉鬘の出仕を許す気になって、男踏歌の折に華々しく参内させた。承香殿の東面に局を賜り、御方々が競い合う宮中はにぎやかで、玉鬘も女房たちも、この晴れやかな気分でしばらく過ごしたいと思いあうのだった。その夜、帝の御前の管弦の遊びに侍っていた兵部卿宮は、同じ宮中に玉鬘がいると思うと落ち着かず、堪えかねて文を届けられた。大将は近衛府の詰所にいたので、そちらからの届け物という体で取り入れられ、玉鬘はしぶしぶ御覧になる。書かれていたのがこの歌で、「囀る声も耳とどめられてなん」と添えてあった。玉鬘は宮を不憫に思って顔を赤らめ、返事のしようもなく思いあぐねているところへ、帝がおでましになる。

 「深山木」は髭黒をさす。『源氏物語』でこの語は、立派ではあるが第一等には及ばぬものを言うのに用いられ、紅葉賀巻でも頭中将を源氏に比して深山木と評していた。「羽うちかはしゐる鳥」は玉鬘で、その木にとまって添っているさまをいう。「またなくねたき」の「なく」に鳥の「鳴く」を響かせ、「またなく」は比類なくの意である。「囀る声」は「百千鳥さへづる春は物ごとにあらたまれども我ぞふりゆく」を引いたもので、世は改まっても自分だけは古びてゆくという嘆きを託す。恨みを言いながら相手を責めず、鳥の姿に託して静かに引き下がるところに、この宮らしい優雅さがある。

深山木:奥山の木。立派ではあるが第一等には及ばぬもののたとえ。ここでは髭黒。
羽うちかはす:羽を交わす。仲むつまじく寄り添う。
またなし:比類がない。「鳴く」を響かせる。
ねたし:ねたましい。しゃくにさわる。
囀る:鳥がさえずる。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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