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いかならん色とも知らぬ紫を
こころしてこそ人はそめけれ

歌の意味
どのようなお心での色とも知らなかった紫を、たいそう深いお心づかいで染めてくださったのですね。
鑑賞
第一部 真木柱

 帝の歌への返しである。そのご様子はまことに若く美しげでこちらが気詰まりするほどであるから、玉鬘は、源氏の君と違うところのない素晴らしさだと気持ちを静めて申し上げた。「今からは、ありがたい御恩をよくわきまえた上でお仕えいたしましょう」と言い添えると、帝はお笑いになって、その今からわきまえられるのではかいのないことだ、私の訴えを聞いてくれる人があれば道理を聞いてみたいものだ、と真剣に恨まれる。その気詰まりさに、玉鬘はもう脈のあるそぶりは見せまいと思い定め、あくまですましてお仕えするので、帝も思うままの言葉はおかけになれず、そのうち馴染んでくれるだろうと思っておられるのだった。

 「いかならん色」はどのようなお心の色か、ということ。「紫」も「そめ」も帝の歌の語をそのまま受け継いでいる。「こころしてこそ」は深く心を用いて、の意である。宮仕えの功労もないのに位を賜った恩を謝する言葉として詠み、恋の訴えのほうは受け取らぬふりを通している。相手の掛詞をひとつ残らず引き取りながら、意味だけを叙位の話に限定してしまう手際で、藤袴巻で兵部卿宮に返した一首と同じやり方である。多くの男に言い寄られながら、悪評ひとつ立てずに切り抜けてきたこの人の身の処し方が、ここにも表れている。

いかならん色:どのようなお心の色か。
紫:紫の色。三位の袍の色。前の歌を受ける。
こころして:心を用いて。深く配慮して。
そむ:染める。思い初める。
けれ:…であったことよ。詠嘆。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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